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約2,800年前の物語が映画に。
2026.10.12
- スタッフブログ
こんにちは、加藤です。
先日のお休みに、クリストファー・ノーラン監督の最新作『オデュッセイア』を先行上映で鑑賞してきました。
『インターステラー』や『インセプション』で知られるノーラン監督の作品ということもあり、以前から楽しみにしていた映画です。
本作の原作は、古代ギリシャの詩人ホメロスによる長編叙事詩『オデュッセイア』です。
約2,800年前に成立したとされ、西洋文学の原点の一つともいわれる作品です。
主人公は、トロイア戦争を勝利に導いた英雄オデュッセウス。戦争を終えた彼は、家族の待つ故郷イタケへの帰還を目指し、神々や怪物が待ち受ける試練に立ち向かいます。
なかでも興味深かったのが、劇中で繰り返し登場する「ゼウスの掟」という考え方です。
これは古代ギリシャで「クセニア」と呼ばれた、客人をもてなす神聖な慣習をもとにしたものです。
見知らぬ旅人が訪れた際には、身分や素性を問う前に食事や休息を与え、安全を守らなければならない。一方で、客人にも主人への敬意を払い、善意を悪用してはならないという義務がありました。
当時は、神々が人間の姿に変わって訪れることもあると信じられており、客人を粗末に扱うことは、神への冒涜にもつながると考えられていました。
しかし、この掟が必ずしも人々を守るものとして機能するわけではありません。
劇中では、オデュッセウスの不在をいいことに、妻ペネロペに求婚する男たちが屋敷に居座り続けます。
客人をもてなすという掟を守ろうとする側と、その善意につけ込む側。
本来、人々が互いを信頼して生きるための掟が、かえって人々を苦しめるという皮肉な構図が描かれています。
まず心を奪われたのは、映像のスケールです。
荒れ狂う海や神話の世界を現実に引き寄せる表現には、圧倒的な迫力がありました。
大きなスクリーンで観ると、波のうねりや風景の広がりまで迫ってくるようで、まるで自分も船上にいるかのような感覚になります。
音響も相まって、静かな場面から一気に緊張感が高まる瞬間には思わず息をのみました。
※ただ、本作は、映画史上初めて全編をIMAXフィルムカメラで撮影された作品としても注目されていますが、日本では完全にこれを体験できる映画館は存在せず、一番近いのがグランドシネマサンシャイン池袋です。
一方で、より深く心に残ったのは、単なる英雄の冒険譚にとどまらない物語の奥行きです。
知略に優れた英雄であるオデュッセウスも、決して万能ではありません。自らの判断によって大切なものを失いながら、それでも故郷への帰還を諦めず、歩み続けます。
その姿から、英雄の偉大さとは、決して負けないことではなく、過ちや喪失を抱えたまま前へ進むことなのだと感じました。
また、ゼウスの掟をめぐる描写からは、正しさとは何なのかについても考えさせられました。
人を信じ、手を差し伸べることは本来尊い行為のはずです。しかし、その信頼が裏切られたとき、人は何を基準に行動すべきなのでしょうか。
掟を守ることが必ずしも正しい結果につながるとは限らず、反対に、目的を果たすためなら掟を破ってもよいのかという問いも生まれます。
単純な善悪では割り切れない人間の矛盾が、この物語に深みを与えているように感じました。
約2,800年前に生まれた物語でありながら、家族への愛情や故郷への思い、選択と後悔、そして人間同士の信頼といったテーマは、現代を生きる私たちにも通じます。
時代や文化が大きく変わっても、人間が抱える葛藤や、大切にしたいものの本質は変わらないのだと感じました。
壮大な映像を楽しめるだけでなく、人間の弱さや信頼の大切さ、そして自分にとっての「帰る場所」について考えさせられる作品でした。
特に印象に残った「ゼウスの掟」は、単なる古代の風習ではなく、人と人とが共に生きるためには何が必要なのかを問いかけているように感じます。
約2,800年もの間、この物語が語り継がれてきた理由も、そうした普遍的なテーマにあるのかもしれません。
古典文学に馴染みのない方でも楽しめる映画だと思いますので、気になった方は少し事前知識を頭に入れてからぜひ映画館でご覧ください!
それでは、また次回のブログで!
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